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2012年11月19日

東電OL殺人事件無罪判決③~状況証拠による事実認定~

弁護士の富田です。
引き続いて東電OL殺人事件無罪判決について書きたいと思います。

この裁判では「状況証拠による事実認定」という手法が用いられました。
「状況証拠による事実認定」とは、被告人の犯行を直接証明する証拠(例えば犯行現場を目撃した証人や被告人の自白などがそれにあたります。)がない場合に、様々な間接証拠(例えば動機の存在や被告人が犯行時間帯に現場の近くにいたことなどです。)などから被告人が本件犯行を行ったかどうかを認定することをいいます。

この事実認定の手法は、直接の証拠がないにもかかわらず無実の人を有罪にしてしまうという危険性をはらんでいます(もっとも、直接証拠があっても評価を誤れば冤罪の危険性があることは事実ですので冤罪が状況証拠による事実認定が用いられた場合に限られないことは当然です。)。

実際、「状況証拠」なるものは、被告人が怪しいという色眼鏡で見ればどのような証拠でも被告人の犯行を裏付けるものに見えてしまうということが往々にしてあります。
そのため、状況証拠による事実認定によって被告人を有罪にするには慎重でなければなりません。

この点について、最高裁判所は平成22年4月27日に、いわゆる大阪平野母子殺人事件において、状況証拠によって被告人を有罪にすることが許されるのは、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることが必要と判断しました。状況証拠によって被告人を安易に有罪にしてはならないと戒めたということです。

この判決が平成12年の控訴審判決の際にあったならば結論も変わっていたかも知れないと思うと残念です。

投稿者 staff : 2012年11月19日 16:27

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