1.刑事手続の流れ
逮 捕
↓(48時間以内)
検察庁に送致
↓(24時間以内)
裁判官が勾留の理由と必要性があるかを判断
↓
勾 留(10日間、やむを得ない事由がある場合にはさらに最大で10日間の延長が可能)
↓
①起訴猶予
②略式手続
③公判請求
まず、警察が被疑者(マスコミ用語では「容疑者」といわれています。)を逮捕してから48時間以内に検察庁に被疑者を送致します。そのうえで検察官が勾留(被疑者の身体を警察署の留置所などに拘束すること。)を請求する場合には、そこから24時間以内に勾留を請求します。裁判官が勾留の理由と必要性があると判断した場合(例えば被疑者を釈放すれば逃亡したり証拠隠滅を行うと疑われる場合などを指します。)には10日間警察署の留置所などに勾留されることになります。さらに、やむを得ない事由があると裁判官が判断した場合には、最大で10日間勾留が延長されます。ここにいう「やむを得ない事由」とは、例えば被疑者や共犯者の取調べが未だ終わっていないとか関係者が多数で捜査に時間を要するといった場合を指します。
その後の処分については、①起訴猶予、②略式手続、③公判請求などが考えられます。
①起訴猶予というのは、最も軽い処分であり、裁判で刑事責任を問うことを猶予するというものです。被疑者を起訴猶予にするのかどうかは検察官が判断します。具体的には、検察官が事件の軽重や被疑者の前科・前歴の有無、被害弁償の有無、被疑者の年齢や反省の程度などを見て判断することになります。
次に、②略式手続というのは、正式な裁判ではなく罰金を納付させることにより刑事責任を問うというものです。
最も重い処分が③公判請求であり、これにより正式な裁判手続で刑事責任の有無や軽重が判断されることになります。その結果、有罪判決が言い渡され、実刑判決であれば刑務所に行くことになります。これに対して有罪判決であっても執行猶予が付けば、直ちに刑務所に行くことはなく、社会内で暮らすチャンスを得ることになります。
2.刑事事件で弁護士が力になれること
そのうえで、被疑者が罪を認めている場合には、被害弁償などに努力することにより起訴猶予(上の図でいうところの①)の獲得を目指します。また、事件の性質上起訴猶予が不可能な場合であっても被疑者の罪が必要以上に大きくならないよう、取調べなどへの対処方法をアドバイスします。
これに対して被疑者が罪を認めていない場合には嘘の自白を取られないように努めます。過去のえん罪事件を見ても、被疑者が取調べの厳しさに耐えかねて嘘の自白をしてしまったために身に覚えのない罪を着せられるというケースが多々あります。そうならないように被疑者と面会して取調べの状況を把握したり、被疑者を励ますのが弁護士の使命です。
以上に対して、公判請求された後(上の図でいえば③の段階に至った場合)に弁護士が選任された場合には、被告人(公判請求された後はこう呼ばれます。マスコミ用語では単に「被告」と言われます。)が罪を認める場合には、被害弁償を行ったり、被告人の今後の更生に力を貸してくれる人(「情状証人」といいます。親兄弟などの身内や職場の上司・先輩などです。)に裁判で証言を行ってもらったり、嘆願書を書いてもらうなどして出来る限り刑が軽くなるよう努力します。
また、被告人が罪の全部又は一部を認めない場合には被告人の主張を裁判所に分かってもらうよう努めるのが弁護士の使命です。
さらに、公判請求された後には保釈を請求することが可能になります。「保釈」という言葉をニュースなどで聞いたことがある方も多いと思いますが、一定額のお金を裁判所に納めることにより裁判が終わるまで社会に出してもらう制度のことをいいます。被告人が保釈を希望する場合には、弁護士は裁判所に被告人の保釈を認めてもらうよう請求します。